言論NPOの私達にとって重要な活動 - 10分野のグローバル課題に関する「進展度評価結果」を言論NPOが公表

進展度評価結果を言論NPOが公表


5月7日から3日間、アメリア・外交問題評議会主催による「第6回年次総会」がワシントンD.C.で開催された。
世界主要25カ国26団体のシンクタンクが参加したが、日本は言論NPO代表の工藤泰志氏と大和総研経済環境調査部長(言論NPO客員研究員)の内野逸勢氏が出席した。
今回の年次総会の課題は、「グローバルな貿易体制」「EUの今後」「サイバー空間」「中東安定化「北朝鮮の核・ミサイル」この5つとなっている。
世界のトップシンクタンクの代表者らにより、活発な議論が展開された。
言論NPOはこのレポートカードと並んで、今後の世界の課題をどう評価するのか10分野に絞り公表した。
また、2017年における課題の重要性に関しての優先十位も公表され、今後国際社会において困難な状況が予想される課題に優先順位がつけられた。

国際協力全般評価は1点(不十分)


2016年の総論では国際協力全体に関する評価を5段階に分けて公表された。

5→成功
4→良い
3→適切
2→可もなく不可もなく
1→不十分
0→失敗

5段階評価は以上のように選別され、2016年の総論では「1→不十分」という結果が出た。
気候変動や国際テロ、国際経済システム、グローバルヘルスなどにおいては3点以上の評価となっていたが、課題解決に向けての言動が確認されただけで成果を期待できるということに直結していないためこのような評価に至った。
3点、4点という評価をつけるにはその方向性を目指しているということ自体評価できなければ加点されることは難しく、国際秩序においても安定していないということが言える。
2016年は、多国間でリベラルな秩序やグローバル課題を化行けるするというガバナンスが大きく揺さぶられた年と断言できる。
イギリス国のEU離脱の国民投票や、アメリカ国のトランプ大統領誕生によって日本はグローバル評価を引き下げなくてはならない事態となった。
この部分が1点、2点と減点された大きな要因である。
2017年においては、この評価を覆すための新しい展開が期待されている。
10課題の優先順位は以下の通りになっており、「国際貿易の拡大」について最も強い関心が集まっている。

1.国際貿易の拡大
2.国際テロ対策
3.サイバーガバナンスの管理
4.国内暴力紛争の防止と対応
5.国際的暴力紛争の防止と対応
6.国際経済システムの管理
7.核拡散防止
8.グローバルヘルスの促進
9.気候変動抑止及び気候変動による変化への対応
10.国際開発の促進

アメリカのトランプ大統領が選挙戦で繰り返し発言した通り、自国の雇用を守り抜くためにどのような行動や戦略を展開するのか、もしかしたら戦後初の国際経済体制を崩壊しかねない状況に陥る可能性もあるとみている。
例えば中国などに保護主義的な行動をとることで、報復や提訴などにもなりかねない。
2番目に国際テロ対策を位置づけたのはこのような理由に基づいて順位付けされたと判断できる。

日米間が実質的な解決に向かうためには


2016年においては、「核拡散防止」「国際的暴力紛争の阻止と対応」「サイバーガバナンスの管理」「国際貿易の拡大」の評価結果が最も最低点である1という評価だった。
日本は被爆国であるにも関わらず核兵器禁止条約に署名しなかったのはなぜなのか未だ疑問が残る。
日本の安全に万全を期すためには、アメリカによる抑止力の提供が重要視されているからだろうか。
核兵器の恐怖を過去に経験しているにもかかわらず、核軍縮のビジョンを現実にできないのは非常に残念だ。
しかし、戦後日本はずっとアメリカ支援の自民主流によって復興してきたのだから、現実的な対応としては仕方ないことなのかもしれない。
アメリカの傘下になっていれば安全という考え方が根底にある限り、世界中を客観的に見渡すことはできないだろう。
こうした局面でアメリカは、今後もリーダーシップを発揮するのかは謎だが、中国やロシアなどの大国がアメリカからの交渉に対してどう挑んでいくかによって状況は大きく変化するであろう。

世界では未だ武力紛争の現実が後をたたない。
武力紛争は、人間の命を簡単に奪い社会に爪痕を残し貧困を助長している。
これは国際的な貿易などで各国の規制が緩いことで武器の拡散につながっていると言える。
この問題を解決するためには、武器の流れを強く規制するための国際社会の取り組みが必要だと考える。
武力紛争によってこれ以上罪のない人の命を、犠牲にすることだけは避けたい。
代替策がないままアメリアが紛争への関与を撤退すれば、国内紛争になった場合の対応はさらに厳しくなるだろう。
国内紛争から国際紛争へと拡大している現実をどう受け止めるべきか、非道徳的な行動によって暴力紛争を阻止することはできるのか、有効な道へと進むには非常に厳しい局面に到達していることは確かである。
日本とアメリカの信頼関係をもっと強くさせるためには、こうした議論や課題評価を積み重ねていくことも大切なのではないかと考えている。
言論NPOによって世界各国の対話が確立し、協力できる関係をこれからも作りあげていって欲しいと思う。