言論NPOの私達にとって重要な活動 - 大きな課題・難民問題についての策を議論

難民問題についての白熱した議論を開催


2月20日に「いま世界を揺るがしている難民問題で、私たちはどのような解決策を目指すべきなのか」をテーマにして公開対話を行った。
対話では、難民問題に対する現状と対策への評価、原因に対する課題は何なのか、といった問題についてG7が取り組むこととは何かについて議論された。

公開対話をする理由とは


言論NPOが主催となり、日本・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・カナダのG7参加国に加えて、インドネシア・インド・ブラジルのシンクタンク代表を加えた計10ヶ国で3月に「東京会議」が開催される。
世界問題についても議論をし、東京会議では日本政府やG7議長国のイタリア政府にも議論内容について提案することを目的としている。
そのプレ企画として公開対話が行われたのだ。

公開対話の出席者の経歴


・司会者:工藤泰志
言論NPO代表。
東洋経済新報社において、週刊東洋経済記者、金融ビジネス編集長、論争 東洋経済編集長などを歴任し、2001年10月に特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げて代表に就任した。

・関西学院大学大学院経済学研究科教授:井口泰
2006年5月から2017年5月まで移民政策学会常任理事・国際交流委員長を務め、2013年5月から2015年5月までは移民政策学会会長を務めた。
2011年には世代間利害の経済学を出版。

・国連UNHCR協会理事長、元UNHCR駐日代表:滝澤三郎
国際機構論、移民・難民問題、国際関係論、国際行政論を専門分野として、2013年4月から東洋英和女子学院大学の教授に就任し、2009年から2014年まで東大大学院総合文化研究科特任教授を併任していた。

・東京外国語大学国際関係研究所所長・教授:渡邊啓貴
パリ高等研究院・リヨン高等師範大学校東アジア研究センター・ボルドー政治学院にて客員教授をしていた。
専門分野は国際関係論。

難民問題の現状とは


政情が不安定であると紛争や迫害が多くなり、命の危険にも及ぶこととなる。
政府に期待がなくなり自国からの脱出を決意し、少しでも生活を良くしようと安全な地域へと逃げ続けるのである。
そうした背景があり、難民が増えつつある現代での難民問題の現状は一体どうなっているのか議論を行った。
だが、滝澤氏は現代の難民は政治難民とは限らないと話す。
数が多いことから今までの枠組みだけでは対処ができないことを指摘するとともに、受け入れる側に大きな負担があると話した。
何千もの亡命申請を処理をする能力や財政難、衛生面の問題もあることから、反発の声も上がっている。
こうしたことから、難民は徐のうねりが大きくなってしまうのではないかと滝澤氏は懸念した。
渡邊氏に関しても同様の意見で、資金や人材不足からトラブルを避けるためにも、世界全体で対応するよう考える必要性を示した。
井口氏は、南スーダンやリビアからの難民流入圧力も高まっていると危惧した。
難民ではシリアばかりが注目されているが、他の国に関しても今後は注目していかなければいけない。

新発想の転換で難民対策


現状の保護体制としては、政治亡命者が来たら救いの手を差し伸べる体制を取っているが、今後発想の転換が必要であると工藤氏が語った。
逃げてくる人たちだけではなく、紛争地に出向くことで逃げることが難しい人たちに救いの手を差し伸べることができ、支援ができるとし「庇護から保護へ」の発想が大切であると指摘。
だが、貧しさから生きていくことが難しいと他国へ目指す生存移民に関しては保護をする制度や体制がないと指摘し、状況改革が必要であると主張した。
国際機構や地域同士の連携を強め「並列的構造」を作っていくことが重要であると渡邊氏は指摘し、対応できなくなっている現状には限界があることを示している。

新たなアイデアで難民問題対策を


難民に人気の国でもあるドイツなどは、負担も大きく政治的に限界に達しつつあるとも英国The Economist紙は主張をしている。
従って、難民を分散させる必要性があるのだ。
滝澤氏はオーストラリアのジェームス・C・ハサウェイ教授の、逃げてくる難民に対して庇護するが、受け入れ国を選ばせないアイデアを紹介している。
そうすることで、負担が分散されるとともに難民側もどこに行くか分からないリスクがあるからとインセンティブが乏しくなる可能性が高いと推測した。
井口氏に関しては、ボランティアの活躍を期待していることから民間のイニシアティブが重要であると主張している。

1番の犠牲者は難民自身である


難民問題によってヨーロッパは大きな負担を強いられている。
だが、1番重要なことなのは犠牲者でもある難民だ。
危機から逃れようと子どもから大人までが移動をし、船が転覆してしまい多くの死者が出たニュースも頻繁に報道されている。
そういった問題を解決させる仕組みを考える必要もあるだろう。
未成年の難民が事故や犯罪に巻き込まれるケースもあり、様々な問題解決に向けて、ヨーロッパだけではなく世界で取り組んでいかなければいけない。