言論NPOの私達にとって重要な活動 - 安倍政権4年目の実績評価、農林水産分野は前年よりわずかにダウン

農林水産分野の4年目の総合評価は2.4点


2016年12月で安倍政権が4年目を迎えたが、工藤泰志氏が代表を務める言論NPOは4年目の実績評価を行った。
4年目の農林水産分野の総合評価は前年2015年度の2.6点から0.2点下がった2.4点。

評価項目は全部で5つあり、

・5年後、10年後の日本の農業のビジョンを描いているか
・「減反廃止」は真に実効的な改革になっているのか
・農協改革は各地域農協の自立と創意工夫を促すようなものになっているのか
・農業の担い手の確保と育成をどうするか
・農地政策にどのように取り組んでいるのか

この5つの視点から評価が行われた。

日本型直接支払い制度を着実に推進した・・・2点


自民党が公約として掲げた「日本型直接支払い制度」は全農地に対して多面的機能から直接支払いを行う仕組みであり、2014年に日本型直接支払い制度の創設を盛り込む「多面的機能法」ができた。
ところが、実際の内容は全農地が対象ではなく、今まで予算措置として行われてきた中山間地域等直接支払と環境保全型農業直接支援、それに加えて農地・水保全管理支払の組み換えや対象範囲の拡大として名称を変更し、直接払いの法制化をしただけだ。

法制化は実現されたものの内容が分かりにくい上に、国民に公約修正の説明がないことが減点の原因だ。
取り組みに関しては地域共同で実行される水路の草刈りや農道の砂利補充などを行う組織への支援などにより小幅な拡大は進んでいるが、農地として維持する方向に進んでいるかどうかは現状では判断が難しい。

農業分野で若者の定着を年間1万人に増倍・・・3点


青年就農者の増加兄より若い農業者の定着を増倍することで年齢構成のアンバランスさを解消し、2025年までに60代以下の就農者数を90万人以上確保する目標を、2015年3月に閣議決定された。
2012年に青年の就農意欲を向上させ、就農後の定着を目標に45歳未満の就農全前2年以内の研修期間の所得確保として年間150万円の給付金、経営が不安定な就農直後5年以内の所得確保として年間最大150万円の給付金が得られる青年就農給付金を設けた。
この施策により45年未満の新規就農者は2014年が18500人だったところ、2015年には19760人に増えた。
一定の成果はあるものの、それでも60歳以上が全体の70%で50歳未満が約10%と年齢構成のバランスに目立つ変動はなく、今後も新たな施策が必要と判断できる。

生産者や集荷業者・団体がメインに円滑な生産が実現できる取り組み・・・2点


行政の生産数量目標の分配に頼ることなく、生産者が経営判断や販売戦略に応じた生産ができるように、主食用米の生産調整の見直しが決定した。
この調整により米の価格が暴落することで他の品目が高くなり、米をつくらない農家が増加する恐れと、米と他品目の収益バランスの措置が必要であり、高レベルでバランスを維持するか、低レベルでバランスを維持するかという問題が生まれる。
政府は高レベルでバランス維持を念頭に置いているが、飼料用米への交付金は今後も続くため、政府が制御する構造が変わらず、生産調整を見直す必要性が不透明だ。
また、本当に生産数量目的の配分がなくなるのか、政府は今後の農家への対応に関して明示しておらず、明確な説明がないことが減点の要因である。

2023年までに農地中間管理機構をフル稼働・・・2点


2023年までに全農地面積の8割を就農者に集積・集約化の実現化を果たすために、農地中間管理機構をフル稼働させることを掲げている。
生産性を高めて競争力を強化するためには集積・集約化によるコスト削減が必要であり、2013年に農地中間管理機構関連法ができた。
2015年の実績は出し手の借り入れ面積が7.6万ha、転貸面積が7.7万haで初年度より3倍もの増加だが、目標達成とは言い難い。
5年後の見通しなど中長期的に日本の農業をどうするべきかビジョンの説明が必要だが、現在ではそれに対する詳しい説明がない状態だ。

農協改革の後押し・・・3点


農協は農業生産力を増やしたり、農業者の経済的社会位置の向上、事業に応じた組合員に最大の奉仕を行ったりすることが目的だが、ニーズに対して的確な対応がない。
農協内でも全農を通じる販売をしない、農協に所属せず販売や調達する農業者も増加している。
その状況で改正農協法が2015年8月に成立されたことで、農協改革が動き出した。
2016年11月の規制改革会議で目標が高く設定され、一定水準の合意には評価ができるものの、政府が一体的に決めるものではなく、農協による自己改革が重要であり、政府の改革後押しも評価できるが、具体的な支援に関してはまだないので現状では判断が困難だ。

日本の農家を存続させる取り組みを考える


農林水産分野の実績評価は昨年とほとんど評価は変わらないが、政府のビジョンが農業関係者はもちろん、国民にも伝わりきれていない現状だ。
日本は少子高齢化に伴い、全体的に年齢構造のアンバランスが続くが、農業に関しては時にアンバランスさが目立つ。
また、耕作放棄地の増加なども問題となっており、日本の農家存続の危機は国の支援に期待しつつ、自分たちも青年農業者を増加する取り組みを考える必要があるだろう。