言論NPOの私達にとって重要な活動 - 日米はどのように協力して民主主義を発展させるか議論

日米同盟の協力関係の構築を考えるフォーラム


日米同盟は両国の安全保障に対して軍事協力の規定と思われがちだが、それ以外の相互協力も関係している。
4月7日に言論NPOと笹川平和財団米国が「民主主義の発展に日米は今後どのように協力すべきか」をテーマにフォーラムを開催。
議論内容は笹川平和財団が出版する「民主主義の発展に向けた日米の取り組み」をベースに、日米の過去と将来の両面からどんな協力関係が求められることが望まれるか議論が交わされた。
セッション前半は現世界の民主主義変容の認識、セッション後半では議題ベースとなっている本の著者による具体例報告が行われた。

民主主義を改善することが重要か


前半は笹川平和財団米会長で過去に米軍勤務、オバマ政権では国家情報官を務めたデニス・ブレア氏と、国際文化会館理事長を務める明石康氏の対談からスタート。
この対談では主要論点が3つに集約され、1つめの論点が現在の民主主義に対する認識について議論した。
まずブレア氏は民主主義を巡っては、第二次世界大戦後の日本とドイツが軍事主義に転換、東西冷戦後に旧ソ連の東欧諸国の民主化、現在は民主主義が広がった一方、過去11年で民主主義は退行したと3回の大波があったことを結論づけた。
さらに、民主主義の発展経緯を考慮すると内部の力により民主主義は生まれ、外部支援は可能だが決定的な要素は国内にあり、平和的民主主義の運動は持続性が感じられ、暴力的手段による政権交代が行われても、結局は権威主義に戻ることを指摘し、民主主義を絶やすことなく改善が重要と話した。
一方、明石氏は民主主義を根付かせることは困難と話し、その上で、アメリカで起きている現実問題は望ましくなく、新しい対策が必要と回答。
現在の非民主主義が解決に至らないとアメリカ憲法はポピュラリズムや非民主主義を保障すると懸念の声を上げた。

中国とトランプ政権の評価を考える


2つめの論点が中国に対しての評価を離したが、両者の意見が分かれた。
司会を務める言論NPOの工藤泰志氏は民主主義がファシズム=ヒトラーを生む可能性、中国の急成長により市民が権威主義に依存する状況があると問題視した。
それについてブレア氏は中国も民主化促進に関与するべきとほのめかす一方、中国自体は政治を含め多い分野で前進するパワーがあり、政治的改革により困難を招く恐れがある、日中の歴史問題に考慮すると助言は困難と明石氏は否定的だった。
3つ目はトランプ政権に関する評価について議論が交わされたが、ブレア氏はイスラム諸国の入国禁止の大統領令を出したが、裁判所に不適切と判断されたことは民主主義だからこその判断であり、トランプ大統領は民主主義の本質を学んでいる最中であり、危機や課題に直面した時に進展すると見解を提示した。
明石氏によるとOJTはアメリカ国民や他国にとって様々なコストが高くついていることを指摘し、現在のアメリカは国民全てにチャンスを与えることがやるべきことで、所得差の拡大を懸念した。
社会格差は無視できない問題であり、日本も行き過ぎないようにしなくてはならないと話した。

司会のボブ氏は民主主義の重要性をアピール


セッション後半は笹川平和財団米国CEOのジェームズ・ズムワルト氏、議論テーマの題材である書籍の執筆陣からは東京大学教授の遠藤貢氏と東京大学教授の佐藤安信氏が参加した。
本書のポイントは「民主主義は推進するに値する価値がある」と司会を務めるダニエル・ボブ氏が挙げた。
民主主義国間の緊張は緩和され協力の実現、各国が軍装備よりも自国の経済成長や制度に力がそそがれたと民主主義の必要性を語った。
そして、日米同盟は単なる軍事同盟ではなく、民主主義が国際平和や繁栄に欠かせない条件の認識とも指摘した。

中国関与によりアフリカの民主化が退化する可能性


遠藤氏は当初はアフリカでは民主社会の理解がなかったが、北米諸国が民主化支援として民主社会をサポートするアプローチしており、アフリカで市民社会と言いだしたと紹介した。
日本も同様の支援を行おうとしたが当時は市民社会が根付いて張ってされておらず実現されなかったが、阪神淡路大地震からNPO法の制度設備が進展し、市民社会の認識が強まったと語る。
ただ、中国がアフリカに関与することが増え、欧米とは異なる基準援助により民主化を阻害する恐れがあると指摘した。

民主主義を実現するためには


ズムワルト氏は日米で民主主義の価値を共有する、民主主義は押しつけではなく国民が生むことが大切で、民主化を支援することは可能と所見を述べた。
このために日本はトレンドを後押しすることが大切と語る。
そして、日米の互いの努力を調整し、補完することで相乗効果を生むと具体例をいくつかあげた。
佐藤氏は民主主義の実現では法的支配と官僚の重要性を主張。
日本が戦後に民主化に成功した理由は明治以降にできた官僚制や法的支配、強力なガバナンスがあったことを挙げた。
また、ミャンマーは西側諸国の経済制裁により支援を失い、中国支援に頼ると利権を持って行かれ、乗っ取られる危機感から民主化が始まったと語り、中国はアフリカに限らずアジアでも影響が大きいと実例を挙げながら指摘した。

民主主義は国民全体がつくるもの


民主主義に対する人々の意識は高まっており、国との協力は一方的なものではなく、対等の立場での支援が重要だと言える。
また、民主主義は押し付けではなく、自国の国民全体から生まれることが大切なことであり、国民一人ひとりが民主主義とは何かを本質を理解する必要があるだろう。