言論NPOの私達にとって重要な活動 - 安部政権の実績評価の点数と具体的な評価内容

政権に対する実績評価の重要性


言論NPOは2004年から定期的に政権の実績評価、選挙時のマニフェスト評価を行ってきた。
私たちが、政権の通信簿と言えるこうした評価作業に毎年取り組んでいるのは、有権者と政治との間に緊張感ある関係を作り出そうと考えていることからである。
今回、安部政権に関する実績評価内容を公表した。
言論NPOでは、民主主義をより強く機能させるためには、国民が強くなるべきだと考えている。
そのため、選挙における国民の政治参加は非常に重要な機会であると言え、政党もこの国が直面する課題解決のためにプランを提示し、その実行を約束する必要があるのだ。
有権者は、明確にそれを判断し、その実行力を見ていかなければならない。
課題解決に向けて政党が競い合い、有権者が判断するという情勢こそ、民主主義のあり方であると言えるだろう。

実績評価作業参加者


実際に評価作業に参加していただいた約60氏の専門家の中から名前の公表を許諾していただいた23氏のみを公開すると以下の通りである。

内田和人氏(三菱東京UFJ銀行常務執行役員)
小黒一正氏(法政大学教授)
小幡績氏(慶應義塾大学ビジネススクール准教授) 
加藤出氏(東短リサーチ代表取締役社長、チーフエコノミスト)
加藤久和氏(明治大学政治経済学部教授)
神谷万丈氏(防衛大学校総合安全保障研究科教授)
亀井善太郎氏(東京財団研究員・立教大学大学院特任教授)
河合正弘氏(東京大学公共政策大学院特任教授)
川崎興太氏(福島大学准教授)
橘川武郎氏(東京理科大学イノベーション研究科教授)
生源寺眞一氏(名古屋大学大学院教授)
神保謙氏(慶應義塾大学総合政策学部准教授)
菅原淳一氏(みずほ総合研究所政策調査部主席研究員)
鈴木準氏(大和総研主席研究員)
田中秀明氏(明治大学公共政策大学院教授)
田中弥生氏(大学改革支援・学位授与機構教授)
寺島英弥氏(河北新報社編集委員)
西沢和彦氏(日本総合研究所上席主任研究員)
早川英男氏(富士通総研エグゼクティブ・フェロー)
藤野純一氏(地球環境戦略研究機関上席研究員)
松下和夫氏(京都大学名誉教授)
道下徳成氏(政策研究大学院大学教授)
山田久氏(日本総合研究所調査部長)
山本隆三氏(常葉大学経営学部教授)
湯元健治氏(日本総合研究所副理事長)

他にも200人以上の専門家たちが各分野の評価のアンケートに答えた。

分野別実績評価内容


2012年に安部政権は誕生したが、今期で4度目となる。
そこで、2012年、2014年の衆議院選挙での政権公約、参議院選挙の公約などをベースに、安倍政権が重要視している公約内容を選定し、300氏近い専門家が座談会、ヒアリング、アンケートなどを通じて評価作業に参加し、それらを総合して評価していった。
5点満点中、2.7点にとどまった得点だったが、この結果は3回目の評価とほぼ同じである。
しかし、評価する項目としては60項目で、去年と同じものは25項目となっており、それぞれの項目が変更されていることになる。
そうすると、結果的に2.7点という得点は歴代政権と比較しても高得点であると判断できる。
高評価を得られた主な要因は、第二次安部政権が長期安定の政権となり、課題解決に向けた成果や意識的に取り組んでいるということなどが挙げられるだろう。
更に、外交・安全保障における項目の評価も平均3.4点と高得点となっており、大きな寄与となっているのだ。
しかし、政権が長期化することで課題解決に対する本格的評価が可能なことから、個別の評価かなりは厳しくなっているというのも実態だ。
安部政権のこれまでの4年間で実現に傾いている項目としては6項目となり、実現できない・困難ではないかという評価項目は24項目までになった。
良い方向へ進まない政策についても、国民に具体的な説明がないのは大きい。

アベノミクスにおける評価


アベノミクス実現は、その目標実現は困難であるという評価結果となっている。
財政再建についても明確になっておらず、改善される可能性も低い。
延期した消費税増税や軽減税率導入に対する状況は現段階では見守るという形だ。
しかし、今後国民の期待を裏切るという結果になってしまえば、再延期に関しては注意が必要となるだろう。
この1年、新3本の矢に見られるように、同一労働同一賃金による正規と非正規の格差是正、介護離職ゼロなど、日本が直面している課題への取り組みを強化している。
このような課題への認識は適切で、進捗も見られる項目もある。
しかし、日本の将来をより良いものにするための構造改革までには繋がっていない。
今、トランプ政権発足や欧州での反自由・民主主義への挑戦などで、世界情勢は大きく揺れている。
TPPや外交政策の公約実現への影響は必至だが、行政改革の本質や地方分権などの統治構造に関しての取り組みがなされていない。
これからの日本の課題にしっかりと向き合うためにも、国民にその都度修正や立て直しの説明が必要なのだ。
また、選挙時には説明していないような新規な政策についても国民に伝えていかなければならないことは明確だ。
特に日本が直面するであろう課題解決を実現するためにも、それに見合った政策やプロセスを描いていかなければならないだろう。